エステからのひらめき
逆に言えばパッシブファンドでは代替できないもの、あるいは一般の個人投資家ではとても構築できないようなリスク・リターン特性を備えた投資商品であれば需要は衰えるどころかむしろ強まっているのです。
やはりパッシブファンドだと市場全体の下げ局面ではこれに追随してマイナスのリターンを引き受けざるを得ません。
また、市場間の相関性が高まる傾向にある最近の金融市場において通常のパッシブファンドのみからなるポートフォリオでは十分な分散効果が得られない可能性があります。
金融技術の進歩は多様なパッシブファンドへの道を切り開いたと同時に、固有のリスク・リターン特性を持つ高度な商品開発を可能としたのです。
したがってこれからの資産運用業界は「中途半端な」アクティブファンドに満足することは許されません。
「究極の」ァクティブファンド、さらにはファンドの枠組み自体を超えていくような投資商品を個人投資家に提供していくことこそ時代の要請なのです。
資産運用業界の各プレーヤーは先に挙げた「シンプル化」の波に乗るのかそれともこの「高度化」の道を適進するのかあるいはこれら二極の両立を掲げるのか、という重大な決断を速やかに行わなければなくりせん。
ただでさえ投資信託会社が乱立し同じような投資商品が雨後の苛のごとく現れる昨今です。
たとえば仮にファンドの枠組み自体が揺らぐとすれば特色の薄い会社はその存立基盤が危ぶまれることになるでしょう。
ファンドの形態を取らないとすれば投資信託会社に代わって証券会社や銀行が直接に投資商品を組成することが可能だからです。
そのように投信会社を介在させない場合の方がむしろコスト面でも投資家本位なのかもしれません。
究極のアクティブファンドとしてはうたとえば前節で紹介したヘッジファンドがこれに該当するものと考えられます。
ヘッジファンドとはマネージャーの力量によく市場動向に左右されない「絶対リターン」を積極的にめざすという点で広い意味でのアクティブファンドに含めてもよいと思われるからです。
また、ヘッジファンドと同じようなポジションを同じような技術精度で一般の個人投資家が自ら構築することはまず不可能です。
まさに究極のアクティブファンドと呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。
一方、ファンドの枠組みを超える投資商品として、ここでは仕組み商品を紹介します。
仕組み商品は投資信託の形態をとることもありますがそうではなく特殊な預金や債券として組成することも可能です。
したがって、投資信託会社を介在させるかどうかは一義的には決まらないという点で、仕組み商品は資産運用業界に大きな一石を投じていると言えるでしょう。
仕組み商品はデリバティブ(金融派生商品‥オプション、スワップ、先物等)など高度な金融技術を利用した投資商品であり伝統的な投資商品とは大きく異なるリスク・リターン特性を有しています。
要するに、デリバティブなどを組み合わせることにより目的に応じたリスクとリターンの関係を実現することをめざす商品ですが、金融技術の限界や資金制約からこうした組み合わせを一般の個人投資家が自ら行うことは現実的ではありません。
たしかに仕組み商品に対しては「わかりにくい」などの声があるのも事実です。
しかしこれから見ていくとおり、その基本的な構造は伝統的な投資対象にさまざまなデリバティブを付加したもので高度ではあっても「複雑怪奇」というほどではありません。
また、サブプライム問題の原因となった住宅ローン債権の証券化商品とは異なく満期保有を前提とすればリスクの所在や値動きの仕組みは比較的理解しやすいのです。
以下、仕組み商品の概略を見ていきましょう。
仕組み商品(ストラクチャード・プロダクツ)とは株式、債券、通貨、商品、ヘッジファンドといったアセットクラスをベースとしてさまざまなデリバティブを組み合わせることにより、投資家にこれまで考えられなかった投資機会を提供する金融商品です。
今、仕組み商品が注目を集めているのは、その組み合わせが理論上無数に存在することから投資家のニーズをきめ細かく満たすことが可能であるためです。
そのように仕組み商品の魅力は何よくもうさまざまなアセットクラス、投資手法を組み合わせて自由に商品性を設計できる点にあります。
つまく投資家のリスク許容度(元本確保条件となる原資産の価格水準をどの程度に設定するかなど)やリターンの受取方法(定期的な収益分配を行うのかどうか、など)、さらには各資産市場に対する相場観(変動の方向や幅など)に応じて商品性をいかようにも仕立てることが可能なのです。
これはまさしく高度な金融技術のなせるわざと言えるでしょう。
すなわち、仕組み商品では一定の条件のもとで元本が確保・保全されるような商品設計が可能であるはか、たとえばレバレッジ(借入れやデリバティブなどを用いて手持ちの投資資金より大きな金額の取引効果を狙うこと)を活用することで、効率的に高いリターンを追求することもできます。
また、たとえば「シンセティック・ショート(プットオプションの買いとコールオプションの売りを組み合わせることにより原資産のショートポジションをさまざまな形で構築すること)」という戦略を駆使することにより、単純な先物売りよくも柔軟にリスクを調整しつつ下落相場でのリターン獲得をめざすことも可能です。
つまり一般の個人投資家が用いることのできない高度な投資手法をさまざまな形で組み合わせることで投資家のニーズに合致した投資商品をテーラーメードで開発・提供することができるのです。
仕組み商品は投資信託の形態のみならず、特殊な預金や債券として組成することもできます。
ここでは仕組み商品の特徴を簡潔に解説すべく仕組み投信、および仕組み頭金・仕組み債のそれぞれについて、それぞれ例を用いて説明します。
投信の形態をとる仕組み商品の代表は「元本確保型」です。
具体例を用いつつその基本的な構造を解説しましょう。
なお、ここで「元本確保」と言う場合、必ず元本以上が返還されるということを意味しているわけではありません。
たとえば証券の発行体が破たんした場合や中途解約した場合には元本割れすることも起こり得ます。
この点、銀行預金などで言われる「元本保証」とは異なります。
ここでは期間3年の元本確保型仕組み商品を仮定しますこの商品は償還時に元本を確保すると同時に、3年間で指数(米国の株価指数)が上昇した場合には株価上昇に伴うリターンをもたらすものとします。
こうした仕組み商品の組成者は通常、投資資金を3年後に償還される「割引債(ゼロクーポン債)」の購入に充当します。
割引債は償還までの利息を割り引いて発行されるため、割引債への投資金額は額面金額よりも少額で済みます。
そして、その差額である余剰資金を、このケースではコールオプション(オプションの買い手が売く手から対象資産の一定数量を特定の日付までに特定の価格(行使価格)で買う権利を有するオプション契約)の購入に充当します(なお、ここでは説明を簡単にするため、取引コスト等については考慮外)。
投資家は3年後の割引債償還時に当初の投資元本を受け取ることができます。
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